天穂のサクナヒメ。
稲作RPGとして昨年末辺りに話題になった作品で、ちょっと前に割引セールをやっていたのでその時に購入していた。
やり始めたのは先々週で、クリアしたのは先週末くらい。つまりエンディング見てからは数日経っている(ぇ
というわけで、超絶今更ながらプレイした感想でも述べておこうかなと思う。
というのも、普通にゲームとして面白くて割と熱中してプレイしたので「何が面白かったのか」をきっちり備忘録として残しておきたかった。
なので、基本的にネタバレががっつり入る。ご留意いただきたい。
農家の忙しさを疑似体験できるという不思議
さて、今更このゲームの特異性というか、特徴なんて述べるまでもないことだとは思うけども。
『天穂のサクナヒメ』というゲームは稲作パートとアクションパートに分けられている。
いや、分けられている、というのは語弊があって、実際には並行して進めてゆく。
これが憎らしいのだ。
一年目こそ何をすればいいのか分からなくててんやわんやするのだが、三年目くらいになってくると
「冬2ってコトは次が田起こしだからしばらく探索できんか」
「三次分げつだから水量調整せんとなぁ……」
「えーと、この辺が収穫になるから探索はあんましないほうがいいな」
みたいなコトを頭の中で考えながらゲームを進める事になる。
まさに実際の農家のようである。
春は田植えの季節で忙しいとか、秋は収穫で忙しい、みたいなのを聞くことはあるし、田舎育ちの自分としては実際にそうして農業に駆り出されている同級生もいたりして「大変なんだなぁ」なんて知識では知っていたけれど。
まさかそれを疑似体験する日が来るなんて思いもしなかった。
しかもクリア直前くらいに知ったのだが、なんとこのゲーム、夏と冬で昼の時間の長さが違うのだ。
だから、稲作が落ち着いている秋の終わりから冬のはじめにかけて「よーし、腹持ちの食材効果を入れたからがっつり探索するぞい……っ!」って息巻いて探索に出かけても、腹が減る前に夜(=敵が桁外れに強くなる)を迎えて撤退せざるをえない……という事態が発生する。
これが本当に憎らしい。
本当によくできているのだ。
うまい具合に時間を作って、探索を進めてストーリーを進展させる……やっているコトはこの繰り返しなんだけど、終盤くらいまではそれがいい塩梅にスパイスなって飽きが来ない。
ゲームデザインとして本当によくできている。
地味にしんどいアクションパート
とはいえ。
流石に終盤になってくるとルーティン化が進んでそれなりに飽きが来るのも事実ではある。
というか、アクションパートが地味にしんどいので割とストレスがたまるのだ。
・空飛ぶ敵ウザい
・鹿ウザい
・戦いづらい地形がウザい
この辺は、プレイした人だったらだいたい共感してもらえるんじゃないだろうか。
もちろん、製作者側がなぜそんな要素(空飛ぶ敵と戦いづらい地形)を入れたのかというのは理解ができる。
地上の敵だけだとバリエーションに欠けるし、毒霧とか熱水とか溶岩とか、そういう地形効果がないと中盤以降真新しさが全くなくなってしまう……というあたりだろう。
とはいえ、サクナヒメのアクションパートは少し進む→敵が出る→少し進む→敵が出る→少し進む→敵が出る……を繰り返すマップづくりになっている。
それで、特にゴール前等の特定のポイントでは敵を全滅させないと前に進めない様になっている、という仕様だ。
で、この敵の出るポイントというのがかなーり多い。
その上戦いづらい地形に空中に対する有効な攻撃手段の乏しさ(というかそもそも攻撃が当てづらい)が相まって、戦闘に無駄に時間がかかるという事がしばしばある。
しかも鹿はノータイムで後ろ蹴りを食らわせるわ、たまらず前に逃げたら狙いすましたように角で突き上げてくるわでごっそりHPを削られ、時にはそのまま全滅してステージの最初から……。
ボーリングのように敵をふっとばして敵にぶつけてダメージを与えるというのが大切だからか、とにかく敵がうじゃうじゃ出てくるので一回の戦闘が長引きやすいというのも辛かった。
この辺の戦闘の面倒さというのは特に後半になると顕著で、ボクはもう面倒くさいから後半は基本的に逃げていた。
そのくらいになると仲間を5人探索に出せるので食料には困らないし。
そんなわけで、もう少しストレスレスでも良かったんじゃないかなぁ……なんて、アクションパートに関しては思ってしまったのである。
まあ、他の出来が素晴らしいので些細な問題ではあるというか、中盤くらいまでは普通に戦闘も楽しいので全然問題ないんだけど。
素晴らしいストーリーと熱いラスボス戦
とまあ、アクションに関しては後半しんどさが勝ってしまったんだけど、一方でストーリーに関しては素晴らしかった。
正直、あそこまでしっかり成長する主人公というのは久しぶりに見た。
感触的にはTOAのルークの成長譚に近い。
一番最初の登場時点では完全にぼんぼんというか、割と腐った性格をしているというのも共通点がある。
終盤の噴火後のサクナの言動や覚悟を決めた姿等は、お前本当にあのサクナか……? という程に頼もしく、こうしてしっかりと成長する主人公を見れた事にちょっとした感動も覚えた。
そしてラスダンとラスボスのBGM。
こいつが熱いんだ……!
あちあちのあちで強烈にやる気を奮い立たせてくれる。
というか、公式ブログにも書いてあったけど、ラスダンのBGMがプロモに入ってるって普通に異例だと思うのよ。
それくらい、『天穂のサクナヒメ』というゲームを表すのにぴったりの曲だったんだろうし、実際、聞いていて普通に「うはぁ、いい曲だぁ」って声に出た。
いやまあ、これはボク自身が、ラスト近辺でテーマソングが入っていると「うぉぉおおっ!」ってテンションが上がるタイプだからってのもあるんだろうけど(風花雪月の『この世界の頂で』とか最高に熱いよね)
初期のサクナを知っていて、そして、神としての自覚と覚悟を決めたサクナの強さを知っていて。
その状態で流れるテーマソングのアレンジ。
熱くないはずが無いのである。
〝米は力だ〟は最高のキャッチコピー
米は力だ。
サクナヒメのPVで使われるこのキャッチコピーが結局は『天穂のサクナヒメ』という作品の全てを表していて、コピーライティングとしてもすごく勉強になる。
こんな素晴らしいコピーが生まれたのも、もともとのコンセプトが非常にはっきりしていて、そしてブレずに形にされたからだろう。
特に稲作においては、普通ならばオートで進めてしまうようなところをプレイヤーにわざわざやらせる。
普通のゲームであれば欠点とも言えるこの仕様は、けれど稲作RPG、ひいては〝米は力だ〟の前には魅力でしかない。
製作者側の「こういうゲームが作りたい!」という思いがこもっているからこそのゲームデザインに、キャッチコピー。本当に勉強になる。
結果的に、あれほど話題になって人気が出たのも納得できる作品だった。
稲作にしたって、最初はサクナが全部ひぃひぃ言いながらやっているんだけど、そのうち便利な道具ができて大量の米を一気に処理できるようになる。
これは実際の農業の歴史において便利な道具が開発されることで時短がなされてきたコトの疑似体験であって、「いやー、楽じゃ楽じゃ」というサクナのセリフに、一生懸命コントローラーのボタンを連打していたボクらプレイヤーも激しく首を縦に降るのだ。
……いやほんと、初期の籾摺はマジでしんどかった。
足漕ぎのやつが出るまで、ほんとに、マジでしんどかった。
人類の発明は偉大だ。
とまあ、そんな感じで色々と発見のあるゲームだった。
アクションパートが若干ダルいという点はあるものの、そんな不満なんてかき消すくらい魅力たっぷりで面白い。
こんなゲームに出会えたコトが素直に嬉しかった。
ありがとう。楽しかったです。
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