簡単にできる○○○! ほど役に立たないものはない

経験上、ああいうタイトルを冠している本で役に立った試しはない。
本屋でぱらぱらとめくる分には悪くないけど、ぶっちゃけああいうのを買うくらいだったらネット上に転がってる情報を網羅的に辿る方がよっぽど有意義。

で、なんでかって話なんだけど。
どんなことでもそうだけど、『何かを身につける』って凄く大変なことで、そこにショートカットはない。
ショートカットはないってことを受け入れて一つ一つ地道に目標をクリアしていくっていうのが一番のショートカット、というのがボクの所感でもある。
これは別に物書きとか絵描きの話じゃなくて、英語とか数学とかプログラミングとそういうのでも全部そう。

だから、ある分野を勉強したいって時には「入門編」とか「~~の基礎」とか書いてある本なりネット上の情報なりをあさって基礎知識的なものを身に着けたら、その後はひたすら細かな目標に向かって邁進していくしかない。
TOEICで400点、600点、800点を目指す時に抑えるポイントとか勉強法が違うように、今自分に足りないのが何なのかを考えながら身につけていく。
その過程で「あそこってどうなってんだ……?」と思った時に「ああなるほどこういうことか」っていうのを積み重ねていく。

ところが「簡単にできる○○○!」ってのは、このプロセスを全部すっ飛ばす。
すっ飛ばして、初めて見た人がそのメソッドに従ってやれば「それっぽい」モノがなんとなくできる、っていう方法がひたすらに書いてある。
楽できるからええやん! と思うかも知れないけど、大体の場合「なぜそれを使うとそれっぽくなるのか」が十分に書いてないし、よしんば書いてあったとしても自分の中に落とし込めていない(そもそも〝なぜそうしなければそれっぽくならないのか〟を理解していない)からよくわからないまんまそれを使うことになる。
つまり初学者には「なぜ筆者がそこを問題点と捉えて、紙面を使って説明しているのか」が理解できない。だから書いてある内容も分かるはずもない。分かった気にはなるかもだけど。
そうして〝なんとなく〟を積み重ねて楽に何かを身につけようとすると、ある特定の状況でしかうまくできない、っていう感じの最悪な結果に陥ることになる。

これがめちゃくちゃ分かりやすいのがセンター数学で、特に関数の問題で「これこれこういう設問だったら、この公式で一気に答えが出る!」みたいのが横行している。
いやまあ、それは使えれば非常に便利である事は疑いようもないしそうでもないととても時間内には間に合わないんだけど、それはきちんと「こういう状況の時にはこれを使ったら早いよね」と理解している人だから意味があるのであって、問題文がそうだから使える! とかいう覚え方をしてたら本質的には何も知らないのと一緒。
いわゆる、「状況が変わると何も解けない人」が生まれるってことになる。
(ちなみに個人的な主観だと、センター試験、というか入試というのはそういう人材をふるい落とすために存在していると思ってる)

結局、ああいう「簡単にできる○○○!」ってのはきちんと基礎を身に着けて色々苦しんだ人が見た時に「そうそう、こうなるんだよねー」と鼻で笑うものであって、初学者がいきなり見るもんではないってオチになる。
あるいは一通り基礎を身につけた段階で他人のコツを参考にする、っていう使い方とか。
まあいずれにしても一番最初に見る本ではないし役にも立たない。どころか初学者にとっては害悪。

習得に近道は絶対に存在しない。
一見近道に見えても、それは結局上辺だけで本質的には何も身についていない。
本気で身につけたいなら苦しむしか無い。一歩一歩確実に、着実に。

まあ、分かってても結局楽な方(遊んだりとか)に流れちゃうんだけどね(ヲイ

備忘録
えろんのかんづめ

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